1.育児あれこれ
11.脱水症について
身体の中の水分が不足してきた状態が脱水症。
脱水症の症状を一応以下に書いておくが、とにかくほとんどの症状が見られるといっても過言ではない。意識が無くなるまで吐き続けて救急車でやって来た子や、水も飲まずに運動していて、けいれんを起こした子などたくさん見てきた。
みんなここまでひどくならないように水分補給をすれば良いのにとしか言いようがない。子どもたちの健康を守るのは周りの大人の責任であり、義務である。子どもたちには大人以上に水分が必要であり、その分、脱水症にも成りやすいことを認識することが第一である。
ここに示した数値は通常の日常生活状態におけるものである。
激しい運動をして汗がたくさん出ればこれより多く必要である。
発熱があればその分多くの水分が必要である。
今年のように暑い夏は汗も多く脱水になりやすい。・・・・である。…
10.みずいぼ
プールが始まる頃になると、「みずいぼ」を取ってくれと言う人が増えてくる。
しかし、最近は手を合わせてでも頼まれない限り取らない。 理由は3つ。
一つは大変痛いらしい(自分では、ピンセットで取ってもらった経験がないので痛みの程度は不明)。見えるぶんを3回くらい、すべて取ると治るようだが、子どもたちは2回目からは逃げ出す。
二つめの理由は、プールで感染する確率は極めて低いこと。
最近の本や学校保健関係の文書には、「ビート板、浮き輪、タオルを共用しないこと」、でプールは可と書いてある。
三つ目の理由は、
これはウイルス感染症であり、いつかは抗体が出来て、自然に治る。皮膚の風邪のようなものだ。その証拠に、大人にうつったのを見たことがない
ただ免疫が出来るまでには半年から一年はかかる。
ただ、どうしてもという人には漢方薬を勧めている。今まで最短、2週間で「みずいぼ」が全て消失した子が3人いる。あとは大体3か月以内には消失する。ただ続けて服用することが肝要である。
…
9.呼吸困難
息苦しく感じ、呼吸するときに努力を必要とする状態である。
普段は意識することなく呼吸をしている。
それが、何らかの原因で呼吸をしにくい状態になると努力する必要が出てくる。
大人や大きな子どもたちは呼吸するときに息苦しく感じ、訴えることが出来る。
しかし、小さな子どもたちは訴えることが出来ないので、周りの観察が重要である。
その状態を観察していると、鼻翼呼吸、陥没呼吸、肩呼吸、起坐呼吸、呻吟、
呼吸回数の増加、チアノーゼ、喘鳴などがみられる。
原因は、いろいろである。
異物(ピーナッツなどもある)、仮性クループ、気管支喘息、肺炎、気管支炎、急性細気管支炎、過換気症候群、などたくさんの病気がある。いずれにしても、呼吸困難が認められた場合は緊急に医療機関を受診することが肝要である。
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- ・鼻翼呼吸 =(鼻の穴が大きくなったり小さくなったり)
- ・陥没呼吸 =(呼吸とともに、おなかが膨らんだり凹んだりが激しい、肋骨の間や鎖骨のあたりや首の付け根のあたりも同様になってくる)
- ・肩呼吸 =(肩を怒らせて呼吸とともに肩が上下する)
- ・起坐呼吸 =(横になると呼吸がしにくくなるため座り込んでしまう)
- ・呻吟 =(息を吐くときにウー、ウーなどと声を出す)
- ・チアノーゼ=(唇や顔色、爪の色などが紫色になってくる)
- ・喘鳴 =(呼吸するときにゼイゼイという音が聞こえる)
8.嘔吐-嘔吐も子どもによくみられる病気のひとつ-
嘔吐は1回でもイヤだが、繰り返すとかなり苦しいものである。
嘔吐の原因はかなりたくさんあるが、
大きく分ければ、
- ①頻回に嘔吐し苦しいことは苦しいがしかしそれ以上ではないもの
- ②同様に苦しく放置できない病気の可能性があるもの
- ③外科的な病気のために頻回の嘔吐が続くものになる。
この①、②、③に対応した原因は下記のようになる。
- ①ウイルス性胃腸炎、急性中耳炎、溶連菌感染症、など
- ②髄膜炎、急性脳炎・脳症、脳腫瘍、食中毒など
- ③腸重積、肥厚性幽門狭窄、急性虫垂炎など
これらの中で最も多いのは①である。特にウイルス性胃腸炎は流行することが多く、一家全員感染した! ということも少なくない。
嘔吐すると口腔内の違和感が強く、水分が欲しくなるし、脱水の心配もする。嘔吐直後に水分を摂取し、また嘔吐ということが良く聞く話である。
嘔吐した時は、最低1時間出来れば2~3時間くらいは何も摂取しないで安静にしておくことが肝要である。 安静にしていても嘔吐が次々に生じてくる時は病院に行くべきである。原因探索が必要で、各種検査も必要となる。
この安静期間中に嘔吐が収まって来れば、暖かいお茶などから摂取を開始し、なるべく早く嘔吐で失った水分の回復に努める。
嘔吐したものの観察も大事である。黄色が強ければ胃液が混じっており、緑色であれば胆汁が混じっている、また唾液状の場合は痰が混じっている。時には血液も混じってくる、胃から、食道から、気管から、鼻血?・・いろいろなところから血は出てくる。色や量などよく見ておくことと、医者に行く時は持って行った方が役に立つ。…
7.下痢-下痢は子どもによくみられる病気のひとつ。
原因は、食中毒のこともあるし、感染症によることもある。
食中毒も感染症の場合もある。つまり、食中毒の原因となるサルモネラ菌やノロウイルスなどは感染症でもある。
下痢を起こすウイルスはたくさんあり、正確な数は不明だが、数十は下らないだろう。
また、一時大騒ぎを起こしたO-157は大腸菌であり、この大腸菌の種類も多く、O-157と同じ溶血性尿毒症症候群を引き起こすものも数種類以上はある。O-157は食中毒としても起こってくるが、感染経路が不明な時も少なくない。
下痢に伴う症状として、発熱、腹痛、食欲不振、頭痛、血便(程度はいろいろ)などがみられる。時に嘔吐が一緒に出現することもある。
症状が重い場合は、便の培養検査や血液検査をしておく必要もある。
下痢の治療は食事療法が中心である。
暖かく、軟らかく、油がなく、刺激のない食べ物が良い。
おかゆ、うどん、温かい飲み物(冷たくない飲み物)、揚げ物はダメで軟らかくなるまで煮込んだ煮物、白身の魚の煮物などになる。果物は、リンゴ、バナナ以外は禁止。
飲み物は、白湯よりも少し糖分があったり、塩分があったりしたものが飲みやすいし吸収もされ易い。スポーツドリンクなども飲みやすい、ただ冷たいものはダメである。摂取した水分量より多量に便に水分が出て行くようになると脱水症状が出てくるので、水分摂取が肝要である。
薬は、ビフィズス菌製剤などが中心のいわゆる整腸剤と腸の動きを抑えるような効果を持つものが主に使用される。
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6.溶連菌感染症
溶連菌感染症の流行が続いている。
この病気の問題は、熱などが下がってから、腎臓が悪くなってくることが少なくないことである。大体、罹ってから2週間くらいで急性糸球体腎炎になることがある。その他の合併症としては、リウマチ熱、中耳炎、副鼻腔炎、肺炎、敗血症などがある。
最近は診断がきちんとされれば、その他の合併症はあまり見られない。
溶連菌の正式名称は、A群β溶血性連鎖球菌である。この菌が、咽頭(のど)で繁殖して咽頭炎を起こした状態が、溶連菌感染症と言われているものである。溶連菌は、咽頭炎以外にも「とびひ」や「蜂巣織炎(あちこちの皮膚のひどい化膿)」なども起こす菌である。
この溶連菌感染症の症状は、突然の発熱(39℃~40℃くらいになることが多い)と全身倦怠感、咽頭痛がみられ、しばしば腹痛、嘔吐、頭痛もある。昨年秋から流行している溶連菌感染症ではいつもより発疹(1~2㎜程度の少し膨らんだ、赤みのあり、痒みも強い)が出ることが多く、発疹だけで受診している子も多くなっている。
また、成人でも溶連菌感染症になっている人が時々あり、症状は子どもよりひどいことが多い。
その他の症状では、舌が赤くなりイチゴの表面のようにザラザラしてくる、耳の下からくびにかけての当たりのリンパ節が腫れてくる、大きくなると2㎝以上にもなり、かなり痛いようだ。
治療は、抗生物質の内服で、熱や発疹などには良く効く。10日以上は飲んだ方がよいと思う。大人は効きにくい人が結構あるが。
ただ、急性糸球体腎炎は起こりうるので、治ってから最低一度は尿の検査をしておく必要がある。
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5.発熱と解熱剤
子どもが熱を出すと慌てる。昼間は意外と冷静な親も、だんだんと夜が更けていくと心配が募り、ついには救急の電話を病・医院にしてしまう。多くの医者の対応は、ひどく元気がなかったり、不機嫌でなかったら、冷やして様子を見るか、解熱剤の座薬でもあれば入れて様子をみるように、くらいの返事が標準か?
熱について考えてみよう。発熱はある意味生きている証拠。低体温になったとき(34℃台、33℃台・・)はもっと重症。病気になったために発熱していることは間違いないが、熱が病気ではなく、病気が起こったためにそれを治す目的で発熱していると考える。
だから、発熱したら薬を使って下げればよいというのはおかしい。
繁殖しやすい温度は37℃くらいであるウイルスや細菌が多い。これらは40℃くらいになると繁殖がしにくくなるので体の防御機構が効果を発揮しやすい。病気になった時に、寒気がしたり、震えが来たりする。
これは病気を治そうとして、脳の中から発熱因子なるのもが放出されそれに対する反応として、熱をつくるために筋肉を振るわせたり、いらない(?)ところに熱が行って逃げてしまわないように手足の血管などを細くしてしまっているからである。
また、汗や呼吸も熱を逃がすので出来るだけ抑制する。
そして、目標の体温に達すると今度は熱を下げようと体は反応し、熱いと感じ始め、汗が出てくるし、呼吸も速くなるし、手の平、足の裏も熱くなって、全身で頑張ってくる。
周りの出来ることは、せいぜい熱が上がる時は暖かくし、暑くなって汗が出始めれば涼しくしてやる、この程度であろう。
解熱剤を使うタイミングは、汗が出始めてそれでも本人が苦しいようなら使えばよい、と言う説明をしているが、ほとんど使うチャンスはないようだ。
また、インフルエンザ、水痘などの病気では解熱剤によっては脳症を引き起こす可能性があり、使ってはいけないことになっている。
熱が出たら解熱剤!! これは危険と考えている。
<< 下記HPも参照に >>
編集済
4.突発性発疹症
早い子では、生後一か月でも罹る子がいるが、多いのは生後6か月から1歳半頃。2歳頃までにはほとんどの子どもたちにうつっている。
症状は、発熱(でる時は40℃を越えることも珍しくない。)、下痢が伴うがこれ以外の症状は少ない。熱は3~4日続き、熱が下がると発疹が出る。胸、腹、背に多く、顔にも少し出る。手足はあまりでない。 2~3㎜くらいから1㎝くらいの大きさの少し盛り上がったような感じの、赤みがかった発疹である。この発疹が出て初めて診断できる。
発疹は4日くらいで消える。
発熱時にけいれん(熱性けいれん)を起こすこともある。
原因は、ヘルペスウイルスの6型と7型で2度罹ることもある。
これらのウイルスは一度感染するとヒトの体内に住みつく。
同じウイルスで発熱などの症状が繰り返すことはないと考えられている。…
3.排便困難(便秘)
排便時に苦痛を伴う子どもたちが少なくない。
対策としては、便量が多いか少ないかを見ることが大切。
少なければ、よく便秘の治療に書いてある繊維成分の多い食事も一つの対策。
少なくなければ、
- ①排便は習慣性が強い
- ②便が出そうになった時に遊びが忙しくなったりすると便意は消失
- ③便が汚いものという意識を持たされると人前では我慢するようになる
- ④便は必ずオマルやトイレでするようになどと言われすぎると便を我慢する
- ⑤便が出た時に臭いとか、パンツに出てもらしたとか言われると隠れてするようになる
ここに挙げた5つの注意をして、便が出た時は喜んでやることが大切。
よく注意してみていると、便が出そうな時は分かるようになる。
その時にパンツの中でも、紙おむつの中でも、オマルでも、トイレでも、やんわりと誘導してみること。
しかし出るまで頑張るのはよくない。少し経ってでなければ次の機会を待つ。
こういう繰り返しでうまく行かなければ緩い効果の下剤をしばらく使う。
これまで、1歳前後から排便時に苦痛があり、7歳くらいまで下剤が必要であった子どもも少なからず診てきた。…