「アトピー」という言葉は一般的によく知られていますが、病名としては多くの場合は「アトピー性皮膚炎」のことを示しています。かさかさした乾燥肌で、かゆみをともない、よくなったり悪くなったりを繰り返す皮膚症状を示す病気です。一般的には、「アトピー性皮膚炎=食物アレルギー」とも考えられがちですが、これは正しくありません。乳児期のアトピー性皮膚炎の多くに食物アレルギーが関与していますが、すべての乳児期のアトピー性皮膚炎に食物アレルギーが関与するのではありません。食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎の場合のみ、アレルギーの原因となる食物の制限が必要となります。アレルギーの原因であることがはっきりしていない食物の不必要な制限は子どもの成長と発達にとって良いことではありませんので、自己判断では決してするべきではありません。食物アレルギーを予防するために妊娠中、授乳中の母親が食物制限することも最近では推奨されていません。
予防のために離乳食を極端に遅く開始する必要もありません。ただし、早すぎる離乳食の開始も良くありません。離乳食の開始は5ヶ月以降にします。特に卵白については早すぎないように注意が必要です。卵白が食物アレルギーの原因となりやすいからです。卵を離乳食で始めるときにはまずは卵黄から始めます。卵白を始めるときも完全に加熱したものから始めます。炒り卵、スクランブルエッグ、卵とじなどの料理法は、加熱が不十分な状態になりがちなので、注意が必要です。卵が離乳食に絶対必要かといえば、そうでもありません。他の食品でタンパク質などは充分摂取できます。一般的にアレルギーを起こしやすい年齢では卵は摂取しない方が良いとの考えもあり、アメリカ小児科学会は、卵の開始時期を24ヶ月(2歳)と示しています。
アトピー性皮膚炎を悪化させる要因は、食物のほかにハウスダストなどの他のアレルゲン、空気の乾燥、肌に触れる物理的刺激、汗やよだれ、なみだなどによる汚れなどたくさんあります。幼児期、学齢期のアトピー性皮膚炎では食物アレルギーが関与する割合は少なくなり、他の要因の関与が大きくなります。アトピー性皮膚炎の場合は、どの年齢でもまずはスキンケアが大切です。