☆ ≪麻疹(はしか)はよくうつる≫
麻疹(はしか)ウイルスは、強い感染力を有し、ヒトからヒトへと感染する。
現在のところ、現行ワクチンによる感染防御効果は認められている。
飛沫を介するヒトからヒトへの感染で、飛沫核感染(空気感染)も重要な感染経
路である。麻疹ウイルスはカタル期の麻疹患者の咳の飛沫、鼻汁などを介して気
道、鼻腔および眼の粘膜上皮に感染する。
本邦では通常春から夏にかけて流行する。
感染性は非常に高く、感受性のある人(免疫抗体を持たない人)が暴露を受ける
と90%以上が感染する。
☆ ≪ほとんど毎年流行≫
毎年地域的な流行が反復している。ここ2年間は大きな流行はなかったが、それ
までは、年間、10万人以上の患者が発生していたと考えられている。この中で2
歳以下の罹患が60%以上を占めており、罹患者の95%以上が予防接種未接種である
。
脳炎は年間50例、死亡例は年間80例程度と考えられている。
成人麻疹(18歳以上)の患者は、多くは入院を要するような比較的重症例である
と考えられる。
☆ ≪ワクチンが有効≫
発症予防には麻疹ワクチンが有効だが、国内での麻疹ワクチン接種率は80%程度に
とどまっていると推定される。
☆ ≪麻疹の症状≫
<前駆期(カタル期)>
感染した後、10~12日経ってから発症する。
この時期は前駆期(カタル期)とよばれ、38℃前後の発熱が2~4日間続き、倦怠
感、不機嫌、上気道炎症状(咳嗽、鼻漏、くしゃみ)、結膜炎症状(結膜充血、
眼脂、羞明)が現れ次第に増強する。
乳幼児では消化器症状として下痢、腹痛を伴うことが多い。
また口腔粘膜は発赤し、口蓋部には粘膜疹がみられ、しばしば溢血斑を伴うこと
もある )。
<発疹期>
カタル期の発熱が1℃くらい下降した後、半日くらいのうちに再び高熱(多くは39.5
℃以上)が出る(2峰性発熱)。 それとともに特有の発疹が耳後部、頚部、前額
部より出現し、顔面、体幹部、上腕、そして四肢末端にまで広がる。
発疹が全身に広がるまで、発熱(39.5℃以上)が3~4日間続く。発疹ははじめ鮮
紅色扁平であるが、まもなく皮膚面より隆起し融合してくる。発疹は次いで暗赤
色となり、出現順序により退色する。発疹期にはカタル症状は一層強くなり、特
有の麻疹様顔貌を呈する。
<回復期>
発疹出現後3~4日間続いた発熱も回復期にはいると解熱し、全身状態が改善して
くる。発疹は退色し色素沈着がしばらく残り、カタル症状も次第に軽快する。7~10
日後には合併症のないかぎり回復する 。
☆ ≪出席停止期間≫
また、麻疹は学校保健法による第二種伝染病に分類され、出席停止期間の基準は
、解熱した後3日を経過するまでである。
☆ ≪合併症は5歳以下あるいは20歳以上で多い。≫
下痢が患者の8%、中耳炎が7%、肺炎が6%におこると報告されている。
脳炎が1,000例に1例程度報告されており、死亡率は約15%で、後遺症が25%に残
るとされている。
その他、クループ症候群、心筋炎・心筋炎、心外膜炎、亜急性硬化性全脳炎など
がみられる。
感染を予防することがもっとも重要である。