法人園研修「今後の幼児教育、そのポイント」

日時:H30年1月13日(土)

15時~17時

 

会場:AP市ヶ谷

講師:白梅学園大学大学院特任教授  無藤 隆先生

演題:「今後の幼児教育、そのポイント」

 

講演内容

○幼児教育としての共通性の確保

幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領、共通の記載

保育内容の5領域はすべての幼稚園・保育所・認定こども園の3歳以上について同一の物が指導される

○幼児教育と小学校以上の教育を貫く柱を確保する。

質の高い保育で、小学校以上、人生の土台を作っていけるように。

〇幼児教育の構造

・入り口 乳児保育 自分・ひと・ものへの関わり。家庭での養育。

・資質・能力が育つ。

・出口 幼児期の終わりまでに育ってほしい姿。

「資質・能力が育つ」ためにはカリキュラム。プロセスが必要。

カリキュラム:全体的な計画、指導計画

プロセス(保育内容・5領域の中で):環境を通しての保育、主体的生活・自発的遊び。保育者の援助。

○幼児教育と小学校教育の接続

「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の共有

 

今後の幼児教育のあり方について、保育現場での写真も参考にしながら詳しく話していただきました。

 

 

 

法人研修『今後の幼児教育、そのポイント』 報告書

 

幼児教育としての共通性の確保

*小学校就学前の就園率が幼保で同じ程度になったこと、研究や実践の積み重ねから幼児教育が幼児期に不可欠な教育であることが認識された

・小中学校でのものや不登校への影響があることが分かってきた

・再来年は無償化(0~2歳は所得制限)

・保育の質が上がってきた

*質の高い幼児教育の大切さがわかった

・子どもの力をどれ位引き出せるか?→その為の勉強をして、自分の保育に活かす

・保育指針、小学校との繋がり=早取りではない。乳幼児にふさわしい教育を小学校に引き継ぐ

・子どもの何を育てるか?何を伸ばすか?=資質・能力

 

幼児教育の構造

資質・能力が育つ=子どもの育つものは何かをはっきりさせて育てる

<入口:乳児保育>乳幼児にふさわしい保育=環境を通しての保育が大切

・自分、ひと、ものへの関わり ・家庭での養育

<出口:幼児期の終わりまでに育ってほしい姿>

・身近な環境に関る、園で出会う全てもの⇔小学校とは違う(時間で分かれていない)

 

カリキュラムマネジメント

<カリキュラム>

「全体的な計画」と全て揃えた=ねらい、子どもの何を育てていくのか

「指導計画」=具体的に何をするのか(子の様子、時期に合わせる←柔軟に変える)

*今までの考えをもとに、子どもに適切なものを明確に、質の高い保育にしていく

→幼児期の終わりの土台=育ってほしい姿

 

<プロセス>中心

*環境を通しての保育、主体的生活、自発的遊び、保育者の援助

Ex 積み木の取り合い、けんか→中学になってぶつかりあい、友だち作りはできない

大学生でも昼食が大変→性格、幼児期の付き合い方

*保育内容・5領域の中で=出会ってほしい事、初めての体験

*いろいろな発見を大切にする=安心していられる場

Ex土に触る、虫に触る→乳幼児期を過ぎると触らなくなる

霜柱が解けて水になる、冷たい、水溜りの水→触らないとわからない

 

 

 

 

*自分でやってみる、作ってみる、使ってみる=見ているだけでは身につかない

Ex TVやディズニーランドは楽しいが見ているだけ、乗り物に並んで椅子に座る=受身の経験

⇔保育園は受身のものはない。心に刻まれる事、印象に残ること

Ex 積み木→自分で並べる、作る  砂場→穴を掘る、水を流す、作る

*自分でやる事⇔大人が楽しませる事ではない(子どもが作りだす事)

=自分で作り出せる力を育てる事が大切

 

幼児教育の資質・能力 (小、中と同じ言い方)

1「知識及び技能の基礎」

2「思考力・判断力・表現力等の基礎」

3「学びに向かう力・人間性等」

心情、意欲、態度が育つ中で、よりよい生活を営もうとする

=大事に、人に見せたい、工夫する、考える、話し合う、粘り強く、最後までやろうとする力等

=発見や気付きは、毎日の生活の中で知識、技能の芽生えがある。

 

10の姿:ア 健康な心と体

「保育園生活の中で、充実感をもって自分のやりたいことに向かって心と体を十分に働かせ、見通しをもって行動し、自ら健康で安全な生活をつくり出すようになる」

・「見通しをもって」→完全には出来ないが、それに向かって育っていくこと

・「ようになる」→「つくり出す」は無理 Ex トイレ

 

イ 自立心

「身近な環境に主体的に関わり様々な活動を楽しむ中で、しなければならないことを自覚し、自分の力で行うために考えたり、工夫したりしながら、諦めずにやり遂げることで達成感を味わい、自信をもって行動するようになる」

・「しなければならないことを自覚し」→気付き

・「考えたり、工夫したり」→思考力

・「諦めずにやり遂げることで達成感を味わい」→学びに向かう力

 

ク 数量・図形、文字等への関心・感覚

「遊びや生活の中で、数量や図形、標識や文字などに親しむ体験を重ねたり、標識や文字の役割に気付いたりし、自らの必要感に基づきこれらを活用し、興味や関心、感覚をもつようになる」

・「興味や関心、感覚をもつようになる」→算数のもと、数は増える、という感じ

・算数ではない

Ex自分の掘ったさつまいもの大きさ自慢をする事になり、どうすればわかるか?→子どもが「重さを量ればいい」と言ったので、用意していた秤を出す。量った物を紙に置いた(重さチャンピオン)

=数の感覚を感じる。

→他の子が「自分の方が長い」と言い

メジャーで測り(長さチャンピオン)

→他の子が「自分の方が太い」と言い、紙テープで巻いたのを外して比べた(太さチャンピオン)

=ねらいは「さつまいもの調理」だったが、数量体験につながる。

=実感を通して感じられるようになる

 

計画をたてる時の考え方

子どもの現状、幼児期の終わりに育ってほしい姿、発達の流れ、園の環境などから

子どもに必要な経験(場の設定)は何かを考えながら、計画をたてる。

→子どもの様子を把握する。何度も挑戦する姿を増やす

・2月に解説書が発行される

 

<感想>

保育所保育指針改定にあたり、その背景、柱とするもの、幼児教育の構造、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿などについて、わかりやすくお話ししていただきました。

今まで「幼児教育の重要性」については、研修でも多々伺っており、自分も含めて保育に携わる者には「当たり前のこと」という認識だったと思いますが、今回やっと“同じ土俵に上がった”と感じます。それは保育所の質の向上の結果でもあり、さらに小、中学校から大人へ繋がり、その資質、能力が育つように関っていくことの大切さが認められた結果でもあり、保育所の役割は重要です。

世界は情報化社会であり、デジタル化、人工知能などもどんどん研究され、人間としての営みが少なくなっています。その中で、保育指針の「10の姿」は、生きていく上でとても大切であり、以前から現場では配慮してきた事が、今回具体的な文章で示され、ねらいとしてわかりやすいと感じます。

無藤先生は「環境を通しての保育」「主体的」「自主的」「自分でやってみる」ということを繰り返し話されました。それは、まさに法人がやっている(やろうとしている)保育そのものであり、理事長先生が以前から、繰り返し伝えておられる事と同じで、改めて法人の保育について全職員が自信をもってほしいと思います。

押し付けや強制、命令でなく、自分たちで楽しみながら、様々な事に興味や関心をもち、いろいろな事に挑戦し、取り組んでいけるよう、私たちは考え、工夫して関っていくことが大切であることを再認識しました。しかしながら、今までの一斉的な保育から視点を変えるのは難しく、簡単ではない部分もあるので、今後の課題だと思います。

例として、実際の保育現場の写真が多数あり、具体的でより理解しやすいお話しでした。特に「ク数量・図形、文字等への関心・感覚」での「さつまいも」の例は、子どもたちが自分のさつまいもを自慢したい事から、次々と案を出していく様子、それにわかりやすく対応していく過程は、いかにわかりやすく子どもたちが、簡単に理解できるかを工夫されて、保育者も保育の楽しさを味わったひと時だと思います。

今回「保育課程」から「全体的な計画」に変わり、“幼児の終わりに育ってほしい姿”に向かって、その園の子どもの様子や発達、園の環境など様々な要因を考慮して、計画していく必要性を伺い、ポイントを把握していきたいと思います。

4月まであと3ヶ月を切り、これからいろいろな部分を見直していく時期となっていますので、職員が法人の理念、方針など共通理解をもって、取り組んでいけるように関っていきます。